Saturday, 7 April 2007
紋章学(HERALDRY)のその2 1.シールド(Shield、盾)
1.シールド(Shield、盾)
紋章の盾の形は、今では「いわゆる標準的な盾の形」、
つまりアイロン型=ヒーターシールドに近い形が一般的に用いられているようですが、
昔はいろいろな形が使われていたようです。
元々、紋章が使われるようになった頃には、
今よりももっと縦に長い形の盾、
いわゆるヒーターシールドを(カイトシールドほどではありませんが)が用いられていました。
しかし、紋章の継承に伴い、
いくつもの紋章が組み合わされるようになると、
縦長では図柄として描きにくくなり、やがて紋章を描く際には、
今のような標準的な(ヒーターシールドの様な)形が使われるようになっていきました。
こうして「実戦で使う盾」と、「紋章の盾」の形が必ずしも同じではなくなっていったため、
実戦の盾のことを「シールド(shield)」、
紋章の盾のことを「エスカッシャン(escutcheon)」と区別して呼ばれることになりました。
現在は「普通のヒーターシールド的な」形(下図上段の左から1番目)が一般的ですが、
それまでには国や地方によって様々な形の盾が使われていたことがありました。
これらの形は「~型」と称されますが、
これはその国の紋章が全てこの形だったというわけではなく、
また他の国の紋章にこの形が無かったというわけでもありません。
ただ単に、その形がその国で(だいたい)最初に使われるようになったという事を表しています。
左上から
アイロン型(ヒーターシールド型)、ドイツ型、
スペイン型、イングランド型、フランス型、
スイス型、ポーランド型、イタリア型、
相続権を持つ婦人用、聖職者用
紋章盾の形で変わったものといえば、「馬頭形」(上図下段の1番右)があります。
これは聖職者の紋章に使われた形です。
中世以降、ヨーロッパでは聖職者も権力を持ち、広大な荘園のような領地を所有、
支配していることが少なくありませんでした。
このため、土地支配者である貴族たちと同様に紋章をもっている聖職者も結構いたわけです。
ちなみに、聖職者の紋章が全て馬頭型だったというわけではないようですが、
聖職者以外でこの馬頭型の紋章をもっていた者はほとんどいなかったようです。
もう一つ変わった紋章盾の形があります。
それが「菱形」(上図下段の右から2番目)です。
基本的に、紋章というものは親から子へ継承されていくというのが前提になっており、
家を継ぐのは男子とされていました。
つまり、息子しか紋章を持っていなかったということになります。
しかし、全ての貴族の家に、必ず男の子が生まれるとは限りません。
なかには女の子しか生まれなかった家もあるはずです。
そんな場合、その娘は「相続権」を持つことになり、
紋章も持つことになります。このような場合、
相続権を持つ独身女性の紋章に菱形が使われました。
このような女性が結婚すると、自身の紋章を真ん中から左右に分け、
左側に夫の、右側に自分の紋章を入れることになりました。
また男性も、相続権を持つ女性と結婚した場合には、
同様に妻の(生家の)紋章を、自分の紋章に加えることとなりました。
妻の生家が高位貴族だったりしたら、その爵位まで自分のものになり、
紋章も取り入れることができたわけです。
そんな具合に紋章の盾にも色々意味があります。
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
No comments:
Post a Comment